シックハウスの原因物質

シックハウスの原因でもある化学物質は、揮発性化学物質が考えられます。その中でも健康への影響が確実視されているものは、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼンなどです。

1 ホルムアルデヒドとはどんな物質か

 ホルムアルデヒドはヒトの粘膜を刺激するため、目がチカチカしたり涙が出る、鼻水が出る、のどの渇き・痛みやせきなど、シックハウス症候群の原因となる代表的な化学物質です。

ホルムアルデヒドとは殺菌作用のある化学物質で、防菌・防カビ剤等に使用されたり、接着剤に含まれていたりします。

室内での主な発生源は「合板」です。住まいには壁、天井、押入、床フローリングなど多くの場所に合板が使用されています。また、タンスや食器棚など木製家具にも多く使用されています。最近の建材は、ホルムアルデヒドの使用を抑えているため、放散量自体それほど多くありません。しかし、数年前まで樹脂や接着剤の原料として広く使用されていたため、10年以上経っても放散が続くことがあります

人がホルムアルデヒドに曝露されて鼻やのどに刺激を感じる最低の濃度は0.1mg/m3とされていますが、嗅覚には個人差があるのでそれより低い濃度で臭気を感じる人もいます。また、眼への刺激はそれよりも低い0.01mg/ m3で現れますので、指針値0.08mg/ m3以下といっても安心はできません。

グラフ 繊維板の品質(9年度と12年度の比較) グラフ 家具に使用されている合板(14年度調査)
ホルムアルデヒドの濃度と起こる症状はWHO(世界保健機関)が例示しています。

濃度(ppm)起こる症状
0.01眼の刺激が始まる最低値、粘膜の中程度の刺激
0.03-0.05中程度の眼の刺激
0.05-0.06臭いが感じられる最低値
0.08眼と鼻に刺激
0.25-0.33呼吸障害の始まり
0.5咽喉の刺激が始まる最低値
2-3眼が刺すように痛くなる
10-20激しい流涙
30-生命にかかわる危険、毒性肺水腫

 平成15年7月からの改正建築基準法では、ホルムアルデヒドを含む建築材料は規格によって使用する面積が制限され、さらに機械換気の設置が義務づけられました。

材料の区分 表示記号 JIS JAS 使用制限
(法規制対象外) F☆☆☆☆ 制限なし
第3種ホルムアルデヒド
発散建築材料
F☆☆☆ 使用面積が制限される
第2種ホルムアルデヒド
発散建築材料
F☆☆ 使用面積が制限される
第1種ホルムアルデヒド
発散建築材料
旧E2、Fc2
又は、表示なし
使用禁止

2 トルエンとはどんな物質か

トルエンは、シンナーに含まれる有機溶剤の一つで、塗料や清掃用のワックス、接着剤などに含まれています。

特にトルエン含有の接着剤を使用した作業に従事している労働者に対し、神経行動機能に影響を与えることが報告されています。

 トルエンは、指針値が示された物質の中で最も揮発しやすい化学物質で、この性質を利用して塗料や接着剤の溶剤(有機溶剤)などに広く用いられています。このことから、新築改築工事後の測定で基準(指針値)を超えて問題となっています。トルエンやキシレンなどの溶剤として使用される化学物質は、適切に使用し二週間ほど換気すればかなりの量は放散してしまいます。(建築業界では「枯れる」と表現します。)放散量が少なくなれば、温度が高く長時間閉め切った状態にならなければ、高い濃度になることはありません。

 トルエンの指針値は、空気1立方メートルあたり260マイクログラム(0.07ppm)です。この数値は、ヒトに健康影響(長期影響)を与える最も低い値を参考に、一生涯呼吸しても十分安全な数値になるよう検討され決められています。

トルエンは空気よりも重たい物質ですが、室内に揮発する程度の濃度では、部屋全体に拡がってしまうので床に高い濃度のトルエンが溜まるようなことはありません。

なお、日本産業衛生学会では、トルエンを使う作業環境で50ppmを勧告値として示しています。

3 キシレンとはどんな物質か

キシレンは、トルエンと同様シンナーに含まれている物質で、接着剤、清掃用のワックスなどに使用されています。

眼や咽喉への刺激、呼吸抑制、肝臓、腎臓への変化、脳への影響などがあり、中枢神経系における感覚系、運動系、情報処理機能が影響を受ける可能性があると報告されています。

4 パラジクロロベンゼンとはどんな物質か

 パラジクロロベンゼンは、タンスや衣類収納ケースなどの防虫剤として数十年前から家庭で用いられている化学物質です。一般にどこで使用していても半年程度でなくなってしまうようですから、使用した量はすべて揮発して室内空気に放散された後、外に出ていく道筋をたどります。

パラジクロロベンゼンは防臭剤、防虫剤、防ダニ剤として使用されており、毒性試験によると無毒性量は10mg/kg/dayとされています。この値に不確実係数を考慮すると室内濃度に関する指針値は240μg/m3となっています。

 〜体調不良の原因となる化学物質を減らすための建材選びを〜

■接着剤や塗料からは揮発性有機化合物が…
VOC とは、トルエン、キシレン、スチレン、パラジクロロベンゼンといった、沸点が 50 度から 250 度までの揮発性 有機化合物の総称です。普通の住宅の室内では、百種類以上の化学物質が検出されるため、その一つ 一つの濃度を出すことは難しい。そこで、VOC の総量として測定しているのが実態だ。 VOC は接着剤、 塗料、建材のほか、家具やカーテン、たばこの煙からも発生している。気体として肺に取り込まれ血 液中に吸収されるほか、目、皮膚、粘膜からも吸収されるため、さまざまな症状をひきおこす原因となります。

■合板とフローリング材
住宅に広く使用される合板とフローリング材は、ホルムアルデヒドの発生源でもあります。加工や塗 装に有害な化学物質が使用されていないかを注意が必要です。

■ 壁紙
塩ビの壁紙は安価で施工や掃除が簡単なことから人気ですが、これに含まれるフタル酸エステルの可 塑剤は、環境ホルモンの一種ではないかと心配されているのです。

■ 畳
畳には、防虫処理が施されているものが多い。ある畳からは、水田の数十倍の高濃度の農薬が検出さ れている。JIS 規格の畳には防虫処理がされているが、表示が義務付けられていてチェックできる。 最近では、炭や木材チップ、天然材料を使用した畳も増えています。

■ 接着剤、塗料など
有機溶剤系接着剤にはトルエン、キシレンなどが含まれているものがあります。メーカーから MSDS という製品安全データシートを取り寄せて、どんな成分がはいっているか大まかな情報を確認しまし ょう。但し5%未満の成分は申告されていないので要注意。天然素材を使用しているからといって安 全であるとは限りません。

■ダニ・カビなどのハウスダストも大きな問題
室内の、花粉、ダニ・カビ、ホコリなど、化学物質以外のものもアレルギー症状の原因となります。 掃除をしないでホコリだらけの家も、広い意味でのシックハウスといえるのです。

■特に注意が必要なのが床下の白蟻駆除剤
新築やリフォームの木工事の際に、さまざまな過程で使用される防腐、防虫処理剤からもさまざまな 化学物質が検出されています。特に問題となっているのは、床下に塗布されていた白蟻駆除剤です。 現在使用禁止となっている白蟻駆除剤に含まれるクロルピリホスなどの有機リン系農薬は、住宅内で 検出される科学物質のなかでも特に有害性が高く、一度、土壌に散布すると5年程度も揮発し続ける といわれています。